小説

 久しぶりに、小説というものを書いてみようかと思い立ったが、書こうと思って書けるならみんな小説家になっているわけで、そう簡単にはいかない。
 近頃、自分の頭で何かを考えて形にするということがなかったから、某コミュニティサイトでエロ小説のようなものをノリで書いていたとき以来の作業、小説の設定を考えるという作業が、けっこう楽しい。
 楽しいのだが、一方で、これが苦痛の始まりになる場合が多い。最初、漠然と自分の頭の中にあったイメージが、設定として紙の上なりパソコンの画面上なりに表れてくると、イメージが具体的になる一方で、しょうもないことまで細かく設定したくなってくる。
 設定自体は楽しいのだが、どうせ、小説の中で使うのはごく一部。そのバックグラウンドとして膨大な設定がある、というのはいいのだが、その設定に引きずられて、自分が思っていた分量の倍以上に話のボリュームがふくらんだりして、収拾がつかなくなる。
 私が書ける小説といったら、ヤングアダルト崩れのつまらない空想小説程度になってしまうのだが、短編というものを書けない(=才能が無い)身の悲しさか、無駄に長くなる傾向がある。ブログと一緒だ。
 別に責任がある立場としてものを書いているわけでも無いから、当然、長くなると飽きてくる。飽きてきても、義務感や責任感があれば書き続けられるのだろうが、そんなものありはしないから、途中で投げ出してしまうという結果に陥りやすい。
 実際、私がきっちりと最後まで書き上げたことがある小説など、片手で充分数え上げられる程度のもの。まあ、金を払って読んでくれる読者がいるわけでもないから、構わないだろう。
 今回の小説とやらも、どうも長くなりそうな気配だ。まだ設定を始めて2日なのだが。



 某コミュニティサイトで書いていた小説は、もともと、私の趣味が小説だったから、まわりから突き上げられて書き始めたものだった。
 その中で、私が書くものといえば堅いものばかりだぞという脅しをかけたところ、あんたの本性はどう考えたってエロなんだから、エロを書きなさい、と命令されてしまった。誰に、とは言わない。複数だった事は確か。
 だがあいにく私は、それまでエロ小説など書いたことがなかった。
 濡れ場を書いた事はある。一度だけ。だが、それは物語の進展上どうしても必要になってしまったということであって(しかも直後に男のほうが暗殺されるという話)、セックスそのものを主題にして物語を書くなどという経験はなかった。
 おかげで、というか、私の経験や妄想力が全然足りなかったというべきなのか、エロ小説は途中で挫折した。
 書いていて興奮するかと思ったが、逆。ああいう小説は、自分が興奮するようなものでなければ読者を興奮させられないのだろうが、残念なことに私は萎えた。書いていて、萎えまくった。しばらくは、同僚からもらったばかりのエロ動画すら見る気がしなかったほどだ。
 自分にとって魅力を感じる登場人物にしたつもりだったのだが、キャラクターがまだ自分の中で他人として認識できるほどに熟成する前に書き始めてしまったからか、書いていてリアリティが感じられず、七転八倒したあげくに中途半端なセックスシーンを勢いだけで書き上げてしまった。後で読み返して、修正する気にもならなかった。一応、それをしようとはしたのだが、修正するくらいなら最初から全部書き直してしまいたくなったりして、それも挫折。
 ついには「もう無理です」と泣きを入れてしまった。
 私に色事は書けないらしい。



 昔は、SF。年代的にもガンダムの影響が強いせいか、ロボット物が書きたくて仕方がなく、FSSやら海外SFやらをごたまぜにしたようなSFを書いていた。このブログでも少し触れたが、引きこもりの最後の時期に書いていたのがそれ。
 結局、自分の設定の海におぼれて風呂敷がたためなくなってしまい、にっちもさっちも行かなくなって投げ出してしまったのだが、心理学的要素や物理学の基本を取り入れるために自分なりに色々と読書をした経験は役に立っている。なんであれ学術的なものを小説に採用しようと思えば、多少なりとも理屈を自分で理解していないと書けないという真理を、痛い思いとともに学習できた、という意味で。
 知らずに書くと、知ったかぶりの罠にはまって、大きな矛盾が出てくる。特に科学の要素はそうで、たとえば相対論が全く理解できていないと、まず間違いなく宇宙物は書けない。惑星周辺だけならともかく、恒星間レベルの話を書こうとするとき、時間の障壁を突破するためのでっち上げがうまくいかないと、物語自体が破綻する。時間軸の問題が解決できていない恒星間文明などありえないからだ。既存のSFから借りてくるにしても、相対論が証明する原理をどうやって突破して行くかというでっち上げの部分を理解しないと導入できないし、それを理解するためには、数式の部分までとは行かないまでも、せめて入門編の物理学くらいは理解できないと苦しい。
 私は全く理系がダメな人間で、当時の私にその障壁はあまりに巨大だった。今ではなおさらだ。



 だからというわけではないが、今回は、あまり難しい理屈が必要ない話を書こうと思っている。
 その小説を公開するか、するとしたらどういう手段でするか、などはまだ考えていない。
 このブログで週単位での掲載を考えてもいいが、ログの無駄になるだけな気もする。といって、小説を書き始めたら多分ブログは稀にしか書けなくなる。その意味では、せっかく作ったブログだから、小説も掲載していったほうがいい気もしないではない。
 まあ、書き始めてから考えるとしよう。とにかく、書き始められる程度にまでは設定を作らないと。