本をいくつか

好きな小説について書こうと思っていたのだが、何冊か思い浮かべては断念する羽目になった。
理由は簡単で、内容が書けないからだ。



たとえば、「エンダーのゲーム」というSFの傑作小説がある。これが傑作と呼ばれる所以は、なんといっても最後のどんでん返しにあるのだが、それについて書けないのなら、わざわざ触れる意味が無い。軽く触れるだけならともかく、ブログ一日分をかけて紹介するとなると、どうしても内容に踏み込まざるを得ないからだ。
私は書評家でも評論家でもないし、まして小説の販促をして稼いでいるわけでもない。私は何回かこのブログで本や音楽を紹介しているが、アフィリエイトなどやっているわけもないから、利益は一切無い。利益が無いのに、書きたいことを我慢してまで触れるという自虐行為に走る理由は無い。



だがそれでは好きな物を紹介できない。
ので、手抜きをする。ごく短い解説でお茶を濁す
質が低いのなら数で勝負、というわけで、いくつか挙げてみる。


エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))


前述の通り、SFの古典的名著。ジャンル的には異星人との宇宙戦争ものだが、エンダーという少年の孤独な日々を丹念に描き、最後の驚愕の展開抜きにしても充分に名著と呼べる傑作。
続編がたくさん出ているが、私が一番好きなのは第一作のこの本。また、この本で扱った舞台を、別のキャラクターの視点から描いた「エンダーズ・シャドウ」も面白い。



2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)


いわずと知れた全SF小説の中の傑作。映画「2001年宇宙の旅」を、監督スタンリー・キューブリックとともに作ったSF作家クラークが、とてつもない量の設定を下敷きにして、彼なりの物語として小説化したもの。一般的な映画のノベライズとは異なり、映画では没になったアイディアを取り入れたり、謎の多い映画のフォローをしたりと、映画のファンは特に読むべき内容。



暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで


イギリスのテレビ番組製作者が、特集を作る際に得た知識などを改めて書籍化したもの。語り口が軽妙で、解説が非情にわかりやすい、暗号の歴史とそれにまつわる人々の人生を描いた本。文系人間でも充分に楽しめる快作。アラン・チューリングの存在を知ったのが、私の最大の収穫だった。



薔薇の名前〈上〉

薔薇の名前〈上〉


記号論学者でもある著者が、様々な実験と該博な知識を詰め込んで世に出した長編小説。宗教論から著者得意の記号論、歴史論、さらにサスペンス性まで、これでもかとばかりにガジェットが飛び出し、読者の頭を揺すってくれる。ショーン・コネリー主演で映画化もされたが、私はそちらは見ていない。



カエサルを撃て

カエサルを撃て


佐藤賢一の小説が好きでよく読んでいるのだが、カエサルの描き方に驚き、一気に引きこまれた。ローマ帝国の事実上の建設者、カエサルが、ガリア戦役中に戦った最大の敵手、ヴェルキンゲトリクスを一方の主人公とし、一方の主人公であるカエサルの迷いや焦燥を鮮やかに描き出した。



空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)


弘法大師空海の生涯を描いた司馬遼太郎の代表作のひとつ。司馬遼太郎の小説はほとんど読んだが、どれかひとつを選べといわれても困ってしまう。というわけで、偶然ちかごろこの本の映像化に挑んだスタッフが作った本を読んだということから、日本が産んだ宗教史上の偉大な天才を描いたこの小説を挙げる。



新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)


少し前の「塩野七生」の回でも触れたマキアヴェッリの著作。余計な解説は必要ないほど、ずけずけと人間の本質を暴き出してくれている。