歴史

ある英国貴族

私は「COURRiER JAPON」という雑誌をよく読んでいるのだが、最新号の特集記事を斜め読みしていて、英国の億万長者ランキングの表を何気なく見て驚かされた。 3位に、ウェストミンスター公爵という名があったからだ。 インドやロシア出身の億万長者が多いのは…

ラテン語起源

カール大帝は、英語で「カール・ザ・グレート」ですが、カール大帝の仏語読みの、シャルル・マーニュの「マーニュ」は、英語での「グレート」の意ですか? そうです。 古代ローマの言葉、ラテン語のmagnusから来ています。 「おおきな」「偉大な」などの意味…

ロシアの南下政策

ロシアの南下政策の目的って、何だったんですか???出来るだけ詳しく教えて下さい!! 最大の目的は不凍港の確保。 飛行機輸送の無い時代、貿易するにしろ資源開発をするにしろ、港が無いことにはどうしようもありませんでした。 ロシアは北国ですから、厳冬期…

チューリングその5

戦争が終わると、チューリングには次の職場が待っていた。 彼がケンブリッジ大学に戻る気でいたかどうかは不明だが、国家は彼に物理学研究所に入るよう指示し、そこで新たなコンピュータ開発計画に携わることになった。 彼が戦前にコンピュータの基礎理論を…

チューリングその4

連合国軍にとって、暗号解読の必要性の重要度は上がる一方だった。 それは、ヨーロッパ戦線に限ったことではない。 ヨーロッパ戦線にも、また対日戦にも手を出さざるを得なかったアメリカは、イギリスが誇る暗号解読技術を欲しがった。 ブレッチレーの暗号解…

チューリングその3

1939年9月、それまでにオーストリアを吸収しチェコスロバキアを保護領化していたナチス・ドイツは、ついにポーランド領内に侵攻を開始した。 ポーランド侵攻は、ポーランドと軍事同盟を結んでいるイギリスやフランスに対する宣戦布告と同じ意味。イギリス、…

チューリングその2

1912年6月、アラン・チューリングはロンドンに生まれる。当時イギリスの植民地だったインドに役人として渡っていた父は、アランが生まれると任地に戻り、母もしばらくすると幼い彼をロンドンに残して父の元へ行く。幼いアランは、乳母や両親の友人、親戚など…

チューリングその1

ジョン・フォン・ノイマン、クロード・シャノンと並び、現代のコンピュータ科学の父とも呼ぶべき存在が、このチューリングという男。世界で始めて、システムとして実用化されたコンピュータを作ったのが、このチューリングのチームだった。 アラン・マシスン…

ティベリウスその4

引きこもり、そして老いたとはいえ、ティベリウスの統治者としての感覚は衰えていなかった。 セイアヌス粛清劇などは、タキトゥスに陰険だとののしられようが、鮮やかな手並みだった。 衰えがあったとすれば、それは彼の人間というものに対する寛容さだった…

ティベリウスその3

本題に入る前に。 ティベリウスは、弟ドゥルーススを嫌っていたという説がある。私はその説に与しない。 その1の中でも書いたことだが、私には、ドゥルーススの存在あってこそティベリウスが奮闘できた時期が、確かに存在したと思える。 兄弟の仲がそううま…

ティベリウスその2

ロードス島隠棲以前の彼は、帝国北方の防衛体制確立のため、ドナウ川以南の領域、現在のブルガリアやセルヴィア・モンテネグロのあたりを平定するべく軍団を率いていた。 ロードスから帰還した彼を待っていた戦場は対ゲルマン戦線だった。 カエサルのガリア(…

ティベリウスその1

ティベリウスは、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスが熱愛の末手に入れた人妻リヴィアの、連れ子だった。 実の父はクラウディウス・ネロの名を持つスーパー名門貴族。妻と子供(ティベリウスと弟ドゥルースス)を時の権力者であるアウグストゥスに譲った、その…

帝政草莽期の男たち

以前、別のブログを書いていたときに、歴史上好きな人間として、古代ローマ帝国の二代目の皇帝、ティベリウスという男についてしつこく書いたことがあった。 このブログで「鉄血宰相」ビスマルクを書いたが、どちらが好きかと問われれば、ティベリウスの方が…

鉄血宰相その4

ビスマルクがプロイセン首相として、あるいはドイツ帝国宰相として、その辣腕を振るうことが出来たのは、主君に恵まれたからだといえる。 プロイセン国王ヴィルヘルム一世という男にも、なかなか興味を惹かれるものがある。 まだ王位に就く以前から、軍人と…

鉄血宰相その3

あまり内容が固くなると、数少ない固定読者の方々から「読みにくいよ」「面白くねーよ」というお叱りを受けるはめになるのだが、一度書き始めてしまった物を今さら撤回もできないので、もう少し書く。 一応、今回と次回で終わらせるつもりではいるのだが。 …

鉄血宰相その2

ビスマルクを語る上で、そのライバルとして常に語られるのが、フランス皇帝ナポレオン三世だ。 彼は、中世から受け継がれた、過密で不潔なパリを近代的な大都市パリに改造したり、産業革命を導入して国力を引き上げた偉大な内政家であり、スエズ運河の建設や…

鉄血宰相その1

オットー・フォン・ビスマルク、という政治家のあだなが、タイトルの「鉄血宰相」。 お気に入りの物を書いていくという宣言のもと、さて、歴史上の人物なら誰を書こうかな、と考えた。 浮かんできた人々のうち、ローマ皇帝ティベリウスは既に書いた*1し、頼…

桜からなぜか悪代官

桜という木はどうしてこうも人気があるのだろうか。 桜という植物についての解説は、検索すればいくらでも引っかかるから、ここではしない。 桜について、個人的に考えていることを何となくまとめつつ書く。 まず、桜は単純に美しい。 植樹される多くの桜は…

マキアヴェッリから連想

ちょっと小説のほうは休憩中。話がまとまる前に書き始めてしまったので、改めて構成している。今さらだが。 ニコロ・マキアヴェッリというイタリア人がいる。 今日、仕事の都合で新宿に出たのだが、昼食をとるにしても少し時間に余裕があり過ぎたので、本屋…

日本史の天才

つい先日まで頼朝を書いていたが、少し中座して別のことを書きたくなった。 天才、というもののことだ。 塩野七生という作家と高校生の頃に出会い、その辺りから西洋史の方に流れっぱなしだった私だが、一方で、司馬遼太郎にも惹かれ、その小説はほとんど読…

皇室への敬意

頼朝を中心につらつらと書いてきた。 少し寄り道する。 日本の歴史の特異性を示す例としてよく挙げられるのが、世界最古といわれる天皇家の存在。 万世一系といい、神代の昔から血を残してきたとされる皇室。神代からというのはともかくとして、信頼できる資…

頼朝その3 身内の幸運

歴史が頼朝という存在を作ったようだ、と私が感じるのは、彼が未曾有の幸運に恵まれていたと思うからだ。 彼の生い立ちは、先述の通り決して幸運に恵まれたものではなかったが、打倒平氏の旗を掲げて以降の彼は、少なくとも公人としては奇跡といってもいい幸…

頼朝その2 氏も育ちも特別な人

頼朝の特異性は、まず、その出自と育ち方にある。 彼の家は、いわずとしれた源氏の棟梁。 もう少し詳しくいうと、彼が生まれた源家とは、天皇の子供が賜姓、つまり皇室から離れて一貴族となったときに生まれた。天皇の子供といえど、母親の身分が低くて皇位…

頼朝その1 歴史が生みだすもの

源頼朝、というと、イメージが暗い。 この辺は歴史の常で、現実主義者は印象が暗くて人気が無い。徳川家康などもそうだし、大久保利通などもそうだろう。 私は自分に現実を直視してやるべきことを断行する、という強さがまるで備わっていないからか、そうい…

地中海

現代ヨーロッパの文明の基本となったのは、言うまでもなくギリシア・ローマ文明。グレコ・ローマン文明ともいう。 現代の覇権国家であるアメリカ合衆国は、他の旧殖民国家と同様、ヨーロッパ文明とは切っても切り離せない関係にある。アメリカの現体制の支配…